この記事は
・伝統的なヨガの種類を知りたい! ・ラージャヨガとハタヨガってどう違うの? ・ヨガはどんな効果があるの?ヨガのデメリットは? |
といった感じでヨガのことはなんとなく知っているけど、もうすこし詳しく知りたいなという人におすすめです。

伝統的な4つのヨガの種類
インドで悟るための修行の一貫ともされていたヨガ。
時代の流れとともに、体をたくさん動かすフィットネス要素が強いものから、心身の緊張をゆるめるリラックス効果の高いものまで様々な流派や特徴のあるヨガが生まれました。 紀元前前からある伝統的なヨガはインドで大切に受け継がれ、人々の支えとなっています。
約4000年以上語り継がれてきたヨガですが、伝統的なヨガには以下の4つの領域があるといわれます。
①ラージャヨガ 瞑想のヨガ ②ジュニャーナヨガ 知識のヨガ ③カルマヨガ 社会的行為のヨガ ④バクティヨガ 祈りのヨガ |
一つ一つ見ていきましょう。
1. ラージャヨガ raja yoga 【瞑想のヨガ】
2〜3世紀に編纂された経典「ヨーガ・スートラ」にもとづき、瞑想により自分自身をを深く見つめるヨガ。
ラージャ=王者という意。
すべてのヨガに多大な影響力があり、ハタヨガ 、クンダリーニヨガ、マントラヨガはラージャヨガの一部ともいわれています。
「王道のヨガ」「マハーヨガ」とも呼ばれます。
●ラージャヨガの一部とされているハタヨガ
私達になじみのあるハタヨガは、ラージャヨガから派生して生まれたものといわれています。
ハ=太陽(陽)、タ=月(陰)という意味で、現在最も多く知られているハタヨガは、体や呼吸を使ってアプローチする生理的なヨガです。
生理的というのは、生きていることにともなう、さまざまな身体の現象や働き、しくみ。呼吸、消化、排泄、血液循環、体温調節、代謝などのこと。
例えばハタヨガで呼吸法をおこない体を動かしポーズを行うとことで、
過度に緊張していた筋肉が緩み、身体のコリが取れてゆきます。
さらに浅かった呼吸が深まることで心が落ち着き心地よい感覚が得られます。
これらはハタヨガをおこなうことで起こる生理的現象です。
ラージャヨガとハタヨガは身体と精神をコントロールするための科学であるともいわれています。
2.ジュニャーナヨガ【知識のヨガ】
ジュニャーナ=真理の意味で「本当の私とはなにか?をただ問う」といった、深い部分で知恵に触れ、問答する哲学的なヨガです。
いつどんな時も変わることのない正しい物事の筋道、永遠不変の道理にかなった法則に忠実なヨガといえます。
インドでは最も高く評価されているヨガという声もあり(ラージャヨガは別として)、賢人や聖者と呼ばれる人たちにはジュニャーナヨガ行者が多いといわれています。
3.カルマヨガ karma yoga【社会的行為のヨガ】
カルマ=行為、そして行為の結果でもある業(ごう)の意味があり、無私のおこないによるアプローチがカルマヨガです。
カルマとは、自分の意思を持ってするおこない(=行為)であり、「行為」には常に「行為の結果」がともなうといわれています。
体の動き(ポーズ)ではなく、日常生活を修行の場と考え、奉仕の心で行動することでカルマを解消する(=おこないを手放す)といわれています。
また「カルマの法則」というものがあり、人はよい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるという「因果応報」と同じ意味もあります。
「私たちがいま受け取るものは、私たちが過去に行ったことの結果である」という報いの法則がカルマの法則なのです。
「手柄と失態」、「栄誉と不名誉」などの作用・反作用の関係で、自分の人生に起こることは全てカルマ(=自分のおこない)の結果であるといわれます。
カルマには、過去のカルマ、現在のカルマ、未来のカルマの3種類があって、3つが相互に関係しあっていますが、ヨガではカルマには良いも悪いもないという考え方です。
ヨガの目標はカルマの鎖(輪廻)を断ち切り、スピリチュアル(魂、精神的、超自然的)なことにおいての無知を原因とするすべての束縛から解放されること。
「真実」を本当に理解するためには多くの教訓を学び、多くの経験を積む必要があります。
そして「真実」だけが唯一自分を自由にしてくれるものであるといわれます。
非暴力・不服従を提唱し人権を擁護し続け、インドを独立へと導いた活動家ガンジーもカルマヨガ行者であるという人もいます。
【ガンジーの言葉①】
「希望を失って落ち込んだ時、私は真実と愛によるやり方が歴史を通じて常に勝利してきたことを思い出す。さまざまな暴君、そして殺人者がいた。一時的には、彼らはまったく無敵であるように見える。しかし最後には、彼らは常に滅びる。それを忘れないでほしい。必ず滅びるのだ。」
【ガンジーの言葉②】
ジャーナリストから世界に向けたあなたのメッセージは何かと尋ねられた時のガンジーの一言
「わたしの人生がわたしのメッセージ」
4.バクティヨガ bhakti yoga【祈りのヨガ】
「信仰のヨガ」
バクティ=尊敬を込めた献身という意味で、信仰の対象への祈りを大切にするヨガ。
人格神や聖者を愛し、高い理想をもつことで我欲を手放していきます。
神を信じ、愛することで悟りの境地に向かうことのできる愛情のヨガです。
献身=他人やある物事のために尽くすこと。 キリスト教においては神のために生涯をささげること。
信仰=神仏などを信じてあがめること。また、ある宗教を信じて、その教えを自分のよりどころとすること。 特定の対象を絶対のものと信じて疑わないこと。
宗教=神・仏などの超越的存在や、聖なるものにかかわる人間の営み。古代から現代に至るまで、世界各地にさまざまな形態のものがみられる。
ちなみにヒンドゥー教や神道は多神教であり、神とは自然のあらゆるものやこの世界を創造した宇宙の意識であるという古来からの教えがありヨガもその一つです。
人間の知識や想像、宗教的な考え方などを遥かに超えた大いなる意識がそこには存在します。
紹介した上記4つのヨガのほかにも「真言」を繰り返し唱えたり歌う「マントラヨガ」などがあります。
現代ではいくつかのヨガを組み合わせて実践する人が多く、ハタヨガ行者でも、『OFF THE MAT=日常生活』を大切にしたり、教典ヨーガ・スートラを学んだり、マントラを唱えたりします。
世界的に有名な現代ヨガのひとつでもあるシヴァナンダヨガの創設者であり、インドの聖者スワミ・シヴァナンダ大師は上記4つのヨガ、それぞれの道を総合的に日常生活で実践することで、すベての側面において自分自身を成長させることができると説いています。
ひとつの流派を極めるのもいいですが、流派が違うからといって対立したり違う流派の考え方を排除するのはそもそも本来のヨガの教えでしょうか?
現代的な流派もない紀元前から行われている伝統的なのヨガは、自分とまわりの間には何の分け隔てもなく、自然の摂理によっておこなわれます。
ヨガをすればするほど、こだわりが強くなったり頭でっかちになってしまうのは本来のヨガの練習と言えるでしょうか?
本来のヨガの練習は自然と感謝の気持ちが溢れて、体に負担なく心地よくおこなうことができます。


ラージャヨガとハタヨガの違い
ヨガの代表的な存在ともいえるラージャヨガと、私たちの生活の中でわりと身近な存在であるハタヨガ。
ラージャヨガとハタヨガはそれぞれどのようなヨガなのでしょうか?
ラージャヨガとは?
教典ヨーガスートラに登場する「ラージャヨガ」は瞑想が中心でポーズは坐法のみ。
そこへ呼吸法を取り入れ、ヨガの悟りを目指しているといわれています。
ただしラージャヨガでは高みへ到達することが難しかったため、のちにポーズや呼吸法、そして瞑想法が開発されたといわれます。
ハタヨガとは?
ほとんどの人が一度は聞いたことがあるヨガのひとつ「ハタヨガ」
①姿勢を保つためのアーサナ(ポーズ) ②プラーナヤーマ(エネルギー調整、呼吸法など) ③ディヤーナ(瞑想) |
上記の3つに加えて、手印(ムードラ)、プラーナの練習方法(バンダ)、浄化法(クリヤ)が練習の基本となります。
心や体を動かす原動力といわれる生命エネルギー、「気」を重視しているハタヨガ。
体や呼吸を自然の摂理に逆らわずにおこなうことで「気の流れ」のバランスが保たれ心身が安定します。
ラージャヨガとハタヨガ
ラージャヨガ
八支則という道徳的思想をベースに悟りへの道を示している。 →ラージャヨガは道徳的思想から瞑想へ |
ハタヨガ
始めにポーズ、次に呼吸法、そしてムドラーと呼ばれる背骨の中を通る「気」の流れを目覚めさせ、最後にサマディ(悟り)がある。 →ハタヨガはポーズを行い、呼吸や気の流れを整え、瞑想へ |
以下、ハタヨガを現代風にアレンジした様々なヨガの流派や種類があります。
✔︎アイアンガーヨガ
正確なポーズを行うために体を補助する器具を用いて1つ1つのポーズを丁寧に行う。
✔︎シヴァナンダヨガ
心身のバランス感覚を取り戻すことを目的とし、体を動かすポーズだけでなく瞑想や呼吸法も同等に重視。
✔︎リストラティブヨガ
クッション、毛布、ベルトなどを使用し、無理のない姿勢でゆっくりポーズをとることにより、緊張の緩和、活力の回復へと導く。
✔︎ヴィンヤサヨガ
呼吸と動作を連動し、流れるようにポーズをとっていく。
太陽礼拝やアシュタンガヨガもヴィンヤサスタイル。
✔︎陰ヨガ
中国の経絡とインドのヨガとタントラ理論を統合したもので、3〜5分じっくりポーズをとることで筋肉よりさらに深い部分にある骨や関節をつなぐ結合組織に働きかけ、身体の柔軟性を深めていく。
✔︎クリパルヨガ
アーサナ(ポーズ)の完成よりも、内面で実際に起きていることを受け入れ、ポーズによる内観を深めることを目的としている。
自分への理解を深め、人との関係を改善するなどセラピー的なヨガ。
✔︎クンダリーニヨガ
気づきのヨガともいわれ、火の呼吸等のクリヤと呼ばれる浄化法をおこない体内のエネルギーを高め活性化させていく。

ヨガの効果とデメリット
ヨガではヒトの体、心、考えをきれいに浄化することで、ヨガの最終目的であるサマディ(悟り)の準備ができたことになります。
ヨガをすることで得られる効果
✔︎血液の滞りのない巡りのよい体になる
✔︎老廃物を体外へ押し出し、体内が綺麗な状態になる
✔︎筋肉が柔軟になり動きが良くなることで、筋肉の近くにある臓器の動きも活発になり、体内が浄化され健康的な身体になる
✔︎呼吸法により、内臓脂肪を燃やしダイエット効果が得られたり、自律神経が整い心が安定する
この効果はほんの一部でヨガにはほかにもさまざまな効果があり、研究され続けています。
現在ではその効果が研究発表され多数のエビデンスがあります。
ヨガのデメリット
✔︎食後すぐにはおこなうことができない
食後2時間は血液が胃や腸に集まり、消化、吸収をする時間といわれています。
どうしても食後しか時間がない場合は主に呼吸法を行うようにしましょう。
できれば食前などお腹が空のときの方がよく動けます。
✔︎種類がたくさんある
現在、ヨガはたくさんの種類や流派があります。
難易度の高いポーズができるようになることが目的であったり、ボディメイクが目的であったり、とヨガをする中で自分の中の「こうなりたい」がそれぞれあることでしょう。
その中で、今の自分の身体や心の状態はどうなのかというところに目を向けずに「目的」のためにヨガをしていると体を痛めることがあります。
私は師に先生は自分自身の身体です、と教わりました。
病気や、怪我が治る時も、人の身体は自身の体の機能を働かせゆっくりと治していきます。
内部や外部の環境の変化を感じても、もとの状態に戻してゆく恒常性という働きが私たちの身体にあります。
流派ができるもっともっと前の伝統的なヨガでは、身体のどこにも無理がないため体を痛めることなく、体感を通して本質的な練習をおこなうことができます。
そして練習を続けていく中で身体の良い変化が自然と起こると言われています。
頭であれこれ考えたり、目的に囚われ過ぎているようなら、一度自分の体の声に耳を傾けてみるといいかもしれませんね。